30年で変わったもの、
変わらない「ものづくり」への矜持
最古参の課長
「みんなで協力して『欠品ゼロ』で乗り切った時の達成感。
それが、一番のやりがいです」
1994年、19歳で門を叩いてから31年。社内で最も長いキャリアを持つ「最古参」として、数々の荒波を乗り越え、いまや工場全体を見渡し、組織を動かすリーダーへと成長を遂げた姿に迫ります。
「個人商店」の集合体を、一つのチームへ
入社当時、30人ほどだった社員数は3倍以上の100人規模へと成長。設備の主力も、職人の勘が頼りだったNC旋盤から、高精度なNC旋盤へと移り変わりました。「昔は夜勤明け、自動機に任せて帰宅しても、朝には不良品の山……なんてトラブルも日常茶飯事でした。寝ようとすると電話が鳴る。そんな苦労もありましたね」そう苦笑いしながら振り返る表情には、数々の荒波を乗り越えてきた自負が滲みます。
かつては自らプログラムを組み、思い通りに加工できた瞬間に喜びを感じていた「一職人」は、いまや工場全体を見渡し、組織を動かすリーダーへと成長を遂げました。現在担当する第3工場は、旋盤、マシニング、ホブ盤、研磨という4つの専門工程が並ぶ、いわば「技術者たちの個人商店街」です。特に頭を悩ませているのが、熟練担当者が支える「ホブ盤」の後継者育成。専門性が極めて高く、一朝一夕では身につかない技術をいかに次世代へ繋ぐか。現場のスペース確保や人員不足といった課題と向き合いながら、日々、最適な生産体制を模索しています。
100種類を超える「多品種少量生産」という難題への挑戦
主力製品の一つであるエクセディ様向けのスポーツクラッチは、フライホイールだけでも100〜200種類に及びます。1ロット1個からという極めて細かいオーダーに対し、熱処理や外注工程を含めた1ヶ月半のリードタイムを管理するのは至難の業です。現在の課題である「在庫スペースの確保と複雑な工程管理」に対し、工場の壁を取り払い、在庫の見える化を実現することで、よりスムーズな動線を作ることを目指しています。「どこに何があるか探す手間を減らしたい」という言葉の裏には、現場の負担を少しでも軽くしたいという、仲間への思いやりが隠れています。
「ありがとう」の言葉が、土曜出勤の疲れを吹き飛ばす
マニュアル車(MT)の需要が減ると言われて久しい昨今ですが、海外を含め、同社の確かな技術を求める声は絶えません。忙しい時期には土曜出勤をこなし、チーム一丸となって納期に間に合わせます。
「みんなで協力して『欠品ゼロ』で乗り切った時の達成感。そして社長から『お疲れ様』と労いの言葉をかけられる。それが、今の私にとって一番のやりがいです」
21歳になる息子さんは、今はゲームに夢中で「肉体労働は……」と笑うそうですが、父が守り続けてきた「日本のものづくり」の現場には、数字だけでは測れない、泥臭くも誇り高いドラマが今日も流れています。
【編集後記】
現場の最前線に立ち続けながら、時代の変化を柔軟に受け入れてきた課長。その「手」は、古い汎用旋盤の感触を覚えつつ、最新のデジタル設備を操ります。技術は変わっても、納期を守り、品質を追求する情熱は、30年前と少しも変わっていません。