信号待ちでブレーキを離すと、アクセルを踏んでいないのに車がじわっと動き出す。あれ、なぜだか説明できますか?
ふだん何気なく乗っているオートマ車。その中には、エンジンの力をタイヤへ伝える「見えない主役」、トルクコンバーターがいます。
今回は、免許を取ったばかりの大学生ショウくんが、リバテックグループのユイ先輩に、そのしくみと、そこで働く部品のことを聞いてみました。
登場人物:ショウ(大学3年生)/ユイ先輩(リバテックグループ社員)
CHAPTER 01
MTとATって知ってる?
🧑🎓
ショウ(大学3年生)
ユイ先輩、この前やっと車の免許を取ったんです!AT限定ですけど。
👩💼
ユイ先輩(リバテックグループ社員)
おめでとう!じゃあ聞くけど、MTとATの違いって分かる?
🧑🎓
ショウ
ATが「オートマ」っていうのは分かるんですけど、MTの車って、ちゃんと見たことないかもしれないです。
👩💼
ユイ先輩
今は新車のほとんどがATだから、そうだよね。MTは「マニュアル・トランスミッション」、ATは「オートマチック・トランスミッション」の略。トランスミッションは日本語でいうと変速機。速さに合わせて、エンジンの力の伝え方を切り替える部品のことだよ。
👩💼
ユイ先輩
MTの車は、足元にペダルが3つあるの。アクセル、ブレーキ、それにいちばん左のクラッチ。そして左手でシフトレバーを動かして、ギアを切り替える。今もスポーツカーなどでは現役で、自分で操る楽しさがある運転なんだよ。
🧑🎓
ショウ
ペダル3つに、手でレバーまで。めちゃくちゃ忙しそうですね。
CHAPTER 02
エンジンは、止まっていても動いている
👩💼
ユイ先輩
それを話す前に、ちょっとエンジンの話をさせてね。エンジンってさ、ガソリンを燃やし続けて動いているの。小さな燃焼を、ものすごい速さでくり返してるんだ。
🧑🎓
ショウ
燃焼…。何が起きてるのか、いまいちピンとこないです。
👩💼
ユイ先輩
分かりやすく言うと、エンジンの中で小さな爆発がずっと続いてる感じ。ガソリンと空気を混ぜたものに火をつけると、一気に燃えてふくらむ。その勢いでエンジンが回ってるんだ。
👩💼
ユイ先輩
ただ、ひとつ注意。エンジンの世界で「爆発」って言うと、燃え方がおかしくなるノッキングっていう、起きてはいけない現象を思い浮かべる人も多いの。だから正しくは「燃焼」。今日は分かりやすさ優先で話すけど、覚えておいてね。
👩💼
ユイ先輩
で、ここからが本題。この燃焼は、電気の部品みたいに簡単にオン・オフできない。信号で止まっているあいだも、エンジンはずっと動いてるよ。
🧑🎓
ショウ
車は止まってるのに、エンジンは動いてるんですね。
👩💼
ユイ先輩
ショウくんが乗るATの車でも、止まっているときにブレーキを離すと、アクセルを踏んでいないのに車が勝手にじわっと動き出すでしょ?
👩💼
ユイ先輩
それは、エンジンが動いていて、ギア(歯車)を通してタイヤを回そうとしているからなんだ。
👩💼
ユイ先輩
でもね、ここで考えてみて。ブレーキを踏んで止まっているとき、エンジンはギアを通してタイヤを回そうと力をかけ続けているのに、タイヤは止まってる。これって実は不思議なの。
👩💼
ユイ先輩
タイヤを無理やり押さえつけて止めているのに、エンジンがギアを回そうとし続けたら…どこかがこわれるか、エンジンのほうが負けて止まるか、しそうでしょ?エンジンが止まるのが、よく聞くエンスト(エンジンストール=エンジンが止まってしまうこと)だね。
🧑🎓
ショウ
たしかに。でも実際は、どっちも起きないですよね。
CHAPTER 03
クラッチは「つなぐ・切る」係
👩💼
ユイ先輩
クラッチは、エンジンとタイヤのあいだにあって、力をつないだり、切ったりする部品。止まっているあいだはクラッチで力を切っておけば、エンジンは動いたまま、タイヤは止まったままでいられるんだ。
🔧 クラッチの役目
- エンジンは、止まっているあいだも動き続けている
- タイヤは、止まったり回ったりする
- そのあいだで、力を「つなぐ・切る」のがクラッチ
🧑🎓
ショウ
MTの左のペダルは、それを人が足でやるためのものなんですね。
👩💼
ユイ先輩
そのとおり!クラッチペダルを踏むと力が切れて、離すとつながるの。
🧑🎓
ショウ
踏んで、離すだけ。それなら簡単そうですけど。
👩💼
ユイ先輩
それがね、走り出すときが難しいの。止まっているタイヤに、動いているエンジンの力をいきなりつないだら、どうなると思う?
👩💼
ユイ先輩
そう。車がガクンと揺れて、エンジンが負けて止まる。これがエンスト。だから、クラッチペダルをゆっくり離しながら、少しずつすべらせるようにつないでいくんだ。足で「じわーっ」とね。
👩💼
ユイ先輩
坂道で止まったときなんて、後ろに下がらないか冷や汗ものだよ。教習所で、みんながいちばん苦労するところなんだ。
👩💼
ユイ先輩
でも安心して。今の新しいMT車の多くには坂道発進アシストがついていて、ブレーキを離しても1〜2秒は止まったままでいてくれるの。そのあいだに落ち着いてクラッチをつなげるから、昔ほどこわくないんだよ。
CHAPTER 04
ギアを変えるときも、クラッチが要る
🧑🎓
ショウ
そんなに難しいなら、クラッチなんてなくしちゃえばいいのに。
👩💼
ユイ先輩
クラッチには、もうひとつ大事な役目があるの。それがギアチェンジ。
👩💼
ユイ先輩
自転車に乗るとき、こぎ出しは軽いギア、スピードが出たら重いギアに変えるでしょ?車も同じで、変速機の中に大きさの違うギアがいくつも入っていて、スピードに合わせて組み合わせを変えてるの。
🧑🎓
ショウ
車にもギアがあるんですね。ATだと気づかなかったです。
👩💼
ユイ先輩
ATは勝手に変えてくれるからね。で、走っているあいだ、ギアはすごい速さで回ってる。しかも、エンジンの力がぐいぐいかかってる。その状態で、別のギアにかみ合わせ直そうとしたら?
👩💼
ユイ先輩
ギアどうしがぶつかって「ガリガリッ」となっちゃう。だから、一度クラッチで力を切って、ギアに力がかかっていないあいだに切り替えて、またつなぐ。MTの運転は、このくり返しなんだよ。
CHAPTER 05
ペダルのないATは、クラッチをどうしている?
🧑🎓
ショウ
あれ?でもATの車には、クラッチペダルがないですよね。止まっているとき、エンジンとタイヤはどうなってるんですか?
👩💼
ユイ先輩
いいところに気づいたね😊ATは、クラッチを使っていないように見えるけど、実は車が自分で同じことをしているの。
👩💼
ユイ先輩
止まるときと走り出すときに、MTのクラッチの代わりをしているのがトルクコンバーター(略して「トルコン」)。エンジンと変速機のあいだにある部品だよ。ギアの切り替えも変速機の中で自動でやってくれるんだけど、今日はこのトルコンの話をするね。
CHAPTER 06
扇風機2台で分かる、トルコンのしくみ
👩💼
ユイ先輩
扇風機を2台、向かい合わせに置いたところを想像してみて。片方だけスイッチを入れたら、どうなると思う?
👩💼
ユイ先輩
正解!じゃあ、回されている側の羽根を、手でそっと押さえたら?
👩💼
ユイ先輩
うん。スイッチを入れた側は回ったまま、押さえた側は止まっていられる。あいだにあるのは風だけで、がっちりつながっているわけじゃないからなんだ。
👩💼
ユイ先輩
トルコンの中も、それと同じ。エンジン側の羽根車が回ってオイルを送り出すと、そのオイルを受けて変速機側の羽根車が回る。風のかわりに、オイルが力を運んでいるんだよ。
⚙️ トルクコンバーターの中にある3つの羽根車
- ポンプインペラー(エンジン側):エンジンと一緒に回り、オイルを送り出す
- タービンランナー(変速機側):オイルを受けて回り、力を変速機へ渡す
- ステーター(あいだ):戻ってくるオイルの向きを変えて、エンジン側の羽根車を後押しする
🧑🎓
ショウ
あっ、だからブレーキで止まっていても、エンストしないんだ!
👩💼
ユイ先輩
そういうこと。止まっているあいだは、エンジン側の羽根車だけが回り続けて、オイルがすべってくれてるの。力はほんの少ししか伝わらないから、ブレーキで止めておける。そしてブレーキを離すと、オイルが運ぶ力で車がじわっと動き出す。さっきのクリープの正体は、これだよ。
🧑🎓
ショウ
MTで人が足でやっていた「少しずつつなぐ」を、オイルが勝手にやってくれてるんですね!
👩💼
ユイ先輩
しかも、走り出しのいちばん力が要るときには、エンジンの力を2倍前後に大きくして伝えられるの。「回す力(トルク)」を「変える(コンバート)」から、トルクコンバーターっていうんだ。
CHAPTER 07
結局、ATにもクラッチが出てくる?
🧑🎓
ショウ
でも、オイルで力を伝えるって、ちょっとすべりそうですね。
👩💼
ユイ先輩
鋭い!扇風機でも、風を受ける側は、スイッチを入れた側より少しゆっくり回るはず。トルコンも同じで、少しすべるぶん力がむだになって、燃費が悪くなるの。
👩💼
ユイ先輩
だから今のATの多くは、スピードが乗ってくると、トルコンの中のクラッチでエンジン側と変速機側を直接つないでしまうんだ。これをロックアップっていうよ。
👩💼
ユイ先輩
走り出しはオイルでなめらかに、スピードが乗ったらクラッチでがっちりつないで燃費もよく。MTでは人が足でやっていた「つなぐ・切る」を、ATは車が自動でやっている、ってことだね。
CHAPTER 08
この中で働く、リバテックグループのふたつの部品
🧑🎓
ショウ
それで、リバテックグループの部品はどこに入ってるんですか?
👩💼
ユイ先輩
このトルコンの中だよ。代表的なものがふたつあるの。
👩💼
ユイ先輩
ひとつ目はタービンハブ。変速機側の羽根車の真ん中にあって、受け取った力を変速機の軸(真ん中を通る回転する棒)へ渡す「つなぎ目」の部品。走り出すときも、ロックアップのときも、エンジンの力はここを通って変速機へ伝わるんだ。
👩💼
ユイ先輩
速く回り続ける部品だから、ほんの少しのずれでも振動や音の原因になる。だから、とても高い精度が求められるの。堺の第1工場の主力製品で、月に10万個を超える規模で作ってるよ。
🧑🎓
ショウ
20万個…!それを全部、ずれなく作るんですか?
👩💼
ユイ先輩
ふたつ目はロックアップピストン。さっきのロックアップのときに、オイルの力で押されて、エンジン側にぴたっとくっつく部品。押し付ける面が平らじゃないと、ぴたっとくっつかないんだ。それにオイルが漏れないように、すき間も細かく見ていく。ここが腕の見せどころだね。三重県のグループ会社・カワテックの第2工場で作ってるよ。
👩💼
ユイ先輩
そうなの。そこに、うちの技術が活きてるんだよ。
CHAPTER 09
見えないけど、毎日回っている
🧑🎓
ショウ
ATって、何もしなくても走ってくれる車だと思ってました。中ではこんなにいろいろ動いてたんですね。
👩💼
ユイ先輩
トルコンは変速機の奥にあって、ふだん目にすることはないし、車の一生のあいだ、働き続けることを前提にした部品。だから、何万個あっても、1個1個同じ品質で作り続けることがすごく大事なの。
👩💼
ユイ先輩
自分たちの作った部品が、街の車の中で動いてると思うと、ちょっと誇らしいんだ。
🧑🎓
ショウ
次にATの車に乗ったら、ブレーキを離したときに「今トルコンが働いてる」って思い出しそうです。
👩💼
ユイ先輩
そう思ってくれるとうれしいな😊街を走る車の中で、私たちの部品も今日も回ってるんだよ。
今回出てきたタービンハブやロックアップピストンをはじめ、リバテックグループはATの中で働く部品を作っています。製品紹介ページで見てみませんか?
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