手の届く目標が、人を動かす。
伝わる言葉で、次の世代へ
N次長
手の届く目標があると、人は頑張りやすい。
意欲を引き出すのは、やはり明確なゴールだと思います。
お話を伺ったのは、入社22年目を迎えるN次長。これまでのキャリアや、若手に向けた目標の示し方、そしてこれからの人材育成についてお聞きしました。
「何でも屋」だった前職。半導体装置の部品づくりから
ーー本日はよろしくお願いします。まずは、入社されるまでの経歴を教えてください。
入社したのは2003年頃、30代を迎えた時期でした。前職は半導体製造装置向けの精密部品メーカーで、ガスラインに使われるステンレス製フィルターを収める金属容器などを手がけていました。
担当していたのは加工だけではありません。加工工法の検討、プログラムの作成、段取り、生産計画、それから工具メーカーさんと組んでの工具開発まで。当時のカワテックより現場が少し小さい会社でしたので、何でも屋のような感じでしたね。装置向けの部品づくりを、一通り経験させてもらった感覚があります。
ーーそこから、なぜ自動車部品の世界へ。
半導体業界には「シリコンサイクル」と呼ばれる3年ほどの景気の波があり、忙しさの振れ幅が大きい世界でした。そろそろ腰を据えて、量産のものづくりを深めたいと考えるようになったんです。
ちょうど家を建てた時期でもありましたし、実家から車で10〜15分という地元であることも大きかったですね。
厳しい方の基準で見る。入社して決めたこと
ーー入社されて、前職との違いは感じましたか。
正直に言うと、半導体部品の基準はかなり厳しかったので、寸法管理は少し穏やかに感じました。ただ、それなら自分は前職の基準のまま見ればいい、と思ったんです。厳しい方の目線を落とさずにやってきたつもりです。
ーー加工そのものの違いはいかがでしたか。
勝手はずいぶん違いました。前職は細く深い穴が中心だったのに対し、こちらは平たく薄いボス形状の部品が中心です。製品の固定方法(チャッキング)や加工の考え方を切り替える必要がありました。
ただ、難削材のステンレスを扱ってきたので、鉄を削る作業は比較的スムーズに進みました。現場にも早く馴染めたと思います。前職で身につけたことが、そのまま土台になった感覚です。
設備の刷新が支えた、会社の成長
ーー入社されてから、会社はどのように変わってきましたか。
正直なところ、入社した当時は会社の先行きに不安を感じることもありました。その状況を変えたのが、機械設備の刷新です。
加工時間を約半分に。投資が次の投資につながる好循環
かつて主力だった日立精機の「NR」は、いまの2倍以上の加工時間がかかっていました。メーカーの倒産という逆風もありましたが、現会長の「受注を増やそう」という方針のもと、村田機械製の小型で高速な平行2スピンドル機などを導入。プログラムの見直しと設備の更新で加工時間を短縮し、利益率の改善が次の設備投資につながっていきました。新しい機械が入るたびに、現場が少しずつ変わっていきましたね。
やりがいは「わかりやすい目標」に宿る
ーーこれまでで印象に残っている仕事はありますか。
みんなで一つの目標に向かって取り組んだ時期ですね。当時の社長が「お客様向けのタービンハブで世界一を目指そう」と掲げ、他社が参入していない領域を除いてシェアの8〜9割を得たことがありました。達成感がありましたし、やっていて面白かったですね。
ーーその経験は、いまの現場づくりにも活きていますか。
はい。若手にも「わかりやすい目標」を示したいと考えています。「品質を上げよう」と言われても数値化しづらく、自分がどれだけ貢献できているのか見えにくいですから。
「自分たちの機械加工で1番」「同じ規模の工場で生産効率1番」——手の届く具体的な目標があると、頑張りやすい。意欲を引き出すのは、やはり明確なゴールだと思います。
伝わる言葉で、次の世代へ
ーー若手の方とは、普段どのように接していらっしゃいますか。
役職や年齢の壁はつくらないようにしていて、機会があれば自分から声をかけるようにしています。ただ、なかなか話題が続かなくて(笑)。うまく続かない日もありますが、それでも歩み寄ることはやめないようにしています。そういうやりとりの中で、人にものを「伝える」ことの難しさも感じてきました。
ーーどのような方と一緒に働きたいですか。
「できます」と言って空回りしてしまう人より、少しずつでも勉強しながら自分を育てていける、向上心のある人ですね。
ーー育成について、考えていらっしゃることはありますか。
工場の中だけで一から教えるのには限界があると感じています。教える側も教え方のプロではないので専門用語が多くなりがちですし、機械音で声が届きにくいこともあります。
ですから新入社員には、一度外部の技術スクールでGコードの書き方や図面の読み方といった基礎を学んできてもらう方が、いまの時代には合っていると思います。外で他社の同世代の技術に触れることは、「自分に何が足りないか」を知るきっかけにもなりますから。
スクールで基礎を身につけ、現場に戻ってから実践的な復習を重ねていく。この流れなら、多国籍化が進む職場でも一人ひとりを着実に育てていけると考えています。
「当たり前」を見直す。社内用語のすり合わせ
現場で当たり前に使われる「L1」「L2」「MC1」「MC2」といった工程の呼び方は、実は社外では通じない社内独自の言い方です。ずっと同じ環境にいると、何が専門用語なのか分からなくなってしまう。新人が入ってきたときこそ丁寧に説明して、誰にでも伝わる言葉にすり合わせたいと思っています。
その基準が、次の挑戦の土台になる
ーーいま、会社は半導体分野にも力を入れようとしています。前職の経験と重なりますね。
そうなんです。半導体向けの部品は、材料が削りにくかったり、種類が多くて数が少なかったり、寸法や見た目への要求が厳しかったりします。どれも、いまの現場が積み重ねてきたことと地続きです。
自分は逆行してきたのではなく、先に基準を持ってきただけなのかもしれません。そう考えると、決して悪くない立ち位置だと思っています。
【編集後記】
半導体装置の部品づくりから自動車部品の世界へ——一見すると流れが逆のようですが、お話を伺ってその見方が変わりました。N次長は業界を移ったのではなく、厳しい方の基準を持ったまま現場に立ち続けてきた方でした。
リバテックグループの外観検査は、一般的な自動車メーカーと比べてもかなり厳しいと言われます。その空気の底には、こうして高い基準を持ち込み、下げずに続けてきた人たちの積み重ねがあるのだと感じました。
「なかなか話題が続かなくて」と照れながら話す一方で、それでも若手に歩み寄ることをやめない。穏やかな語り口の奥にある実直さが、とても印象的なインタビューでした。