±0.002mmの極限精度に挑む。
最終工程を守り抜く職人の覚悟
S係長
精度は一瞬では出ない。
積み重ねでしか辿り着けない。
ある重要部品の最終工程。それは、これまでのすべての工程の積み重ねが試される、絶対に失敗が許されない舞台です。その過酷な現場で、ひときわ高い精度を要求される製品と日々向き合っているのがS係長。「±0.002mm」という極限の精度はどうやって生み出されるのか。そして、プレッシャーの中で現場を回し続ける原動力とは。職人の真骨頂とも言える、その仕事の裏側に迫りました。
削っては測る。0.01mm以下の緻密な攻防
——S係長が担当されているのは、特に高い精度が求められる工程だと伺いました。
ええ。私が担当しているのは、ローター加工の中でも「±0.002mm」という非常に厳しい寸法管理が求められる工程です。0.002mmなんて目には見えませんが、製品の性能を左右する絶対的な数字なんです。
——0.002mm……想像もつきません。どのようにしてその精度を出していくのでしょうか?
一気に削り出すことは不可能です。最初はスペックの少し手前から始めて、そこから0.01mm単位以下で段階的に、本当に少しずつ刻みながら加工を進めていきます。少し削っては機械を止め、測定し、また補正を入れて削る。地道で気の遠くなるような作業ですが、この積み重ねしか正解はないんです。
「1個10万円」のプレッシャーと、“測る力”
——最終工程となると、失敗したときのリスクも大きいですよね。
そうですね。最終工程でわずかでもズレが出れば、その製品は不良品になります。この製品の場合、1つ不良を出すと約10万円の損失に繋がってしまうんです。だからこそ、最後の寸法出しには最大限の神経を尖らせます。プレッシャーは常にありますが、精度をピタッと出し切った瞬間は、やはり職人としての醍醐味を感じますよ。
デジタル機器の数値に頼り切らない、研ぎ澄まされた手の感覚
デジタルのエアマイクロメータを使用していますが、デジタル機器の数値だけに頼り切ることはしません。最後は必ず、ピンゲージが「入るか、入らないか」という自分の手の感覚で最終判断を下します。
実は、同じ測定器を使っても、測る人によって結果に微妙な差が出てしまうほど繊細な世界なんです。だからこそ、一番重要なのは「正しく測る力」。技術を高いレベルで安定させ、いつ、どんな時でも正確に状態を把握できる感覚が不可欠です。
代わりがいない。現場を回し続ける責任と覚悟
——これほどの技術、誰にでもできる仕事ではありませんね。
現状、この工程を任せられているのはごく限られたメンバーだけです。一人前になるまでには、どうしても2か月くらいはかかってしまう非常に専門性の高い業務ですから。本当は後進の教育にももっと時間を割きたいのですが、10台の設備を少人数で回しており、納期を守るために私が1人で複数台を管理することも少なくありません。時には夜間もフル稼働です。
——「休むにも代わりがいない」という過酷な状況ですが、なぜそこまで頑張れるのでしょうか。
責任感……でしょうかね(笑)。過酷な状況であっても、絶対に品質は落とさない。そして確実に納期を守り、成果を出し続ける。それが現場を預かる者の務めだと思っています。
【編集後記】
「精度は一瞬では出ない。積み重ねでしか辿り着けない。」
インタビューの最後にS係長が語ったこの言葉は、まさに彼自身の仕事への姿勢そのものでした。
見えないほどのわずかな誤差にこだわり、プレッシャーに打ち克ちながら、愚直に測定と補正を繰り返す粘り強さ。その背中と研ぎ澄まされた感覚が、私たちのものづくりの確かな品質を支えています。