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【社員インタビュー】「品質は検査ではなく、現場で作り込む」——自動機を自作する異色の品質部長が語る、人と技術の最適解

2026.06.11

PEOPLE / 品質部門トップ

1回のチェックは信じない。
品質を守る「泥臭い防波堤」

T部長

「人は間違えるもの」という教訓から、
1回の確認を信用しすぎない仕組みを作った。

製造業における「品質」とは、決して最終工程の検査だけで守られるものではありません。自らプログラムを組んで専用機まで作ってしまう生粋のエンジニアでありながら、品質部門のトップとして現場を牽引するT部長。他社が驚くほどの徹底した検査体制の裏にある「人間観」や、AI時代における人材育成の葛藤まで、その熱き本音に迫りました。

1. 1回のチェックは信じない。品質を守る「泥臭い防波堤」

——御社の品質体制は非常に厳格だと伺っています。具体的にどのような方針なのでしょうか?

当社の基本は「全数検査」、そして工程内で不良を確実に止めることです。製造現場では、刃物交換時に製品が斜めに削れる「振れ」や、「切り粉(異物)」の発生、「カミ(噛み込み)」といった問題がどうしても起こり得ます。これらを見逃せば重大なクレームに直結しますから、部品が正しい位置にあるかを確認する「着座検知」も含め、抜き取りではなく全数でチェックしています。

——出荷数が増えると、全数検査は効率面でかなり負担になりませんか?

おっしゃる通りです。しかし、お客様から求められるスペックが非常に厳しい以上、画期的な機械でも登場しない限り、ここは妥協できません。それに、機械の検知能力も完璧ではありません。だからこそ当社では「ダブルチェック」を大前提にしています。「人は間違えるもの」という過去のトラブルの教訓から、1回の確認を信用しすぎない仕組みを作りました。「人と設備」「前工程と後工程」といった複数の視点で網を張る。他社さんからは「そこまでやるのか」と驚かれますが、この泥臭い積み重ねが品質の要なんです。

2. 理想は「品質部門より、製造部門が強い会社」

——品質部長というお立場でありながら、「製造部門が一番強い会社が良い」とお考えだそうですね。

はい。品質部門がルールを作って、製造現場がそれにただ従うだけの組織は弱いです。不良が出てから品質部門が動くのは、あくまで「後追い」にすぎません。本当に強い工場というのは、日々の作業の中で一番多くの気づきを得ている現場の作業者自身が「どうすれば不良を防げるか」を自ら考え、未然に改善できる組織です。品質は検査で作るものではなく、工程で作り込むもの。今、当社の現場にはそうやって自発的に動く空気が醸成されていて、私たち上層部もそれを全力で支援しています。

3. 「中身を知る」強み——検査装置も自社で作る理由

——現場力だけでなく、技術力も御社の強みだと感じます。部長ご自身が自動機を自作されたこともあるとか。

過去に給水機を作ったことはありますね(笑)。ラダー言語(シーケンス制御の言語)を独学で覚えて、自分でプログラムを組みました。お客様からも高く評価していただき、嬉しかったですね。当社では、検査装置を外部に丸投げするのではなく、自社で開発・内製化することを大切にしています。

圧倒的な改善スピードを生む「内製化」の強み

現場のニーズにいち早く、最適に合わせられるからです。外部に依頼するより圧倒的に改善スピードが速いですし、何より「ノウハウが社内に蓄積される」のが大きい。ラダー言語を理解して自分で装置を作れれば、機械が止まった時にも「なぜ止まったか」「どのセンサーがおかしいか」と、シーケンスを辿って原因を的確に把握できます。原理を知っている人間がいるかどうかで、トラブル対応の力は天と地ほど変わります。

4. AI時代だからこそ問われる「自分の頭で汗をかく」教育

——そうした高度な技術やノウハウを、若手へ伝承していくことも今後のテーマになりそうですね。

それが一番の課題です。ラダー言語を扱える人材は社内でも非常に少なく、過去に教えようとしたものの、なかなか育ちにくいのが実情です。今の現場はベテランが多いので人員は足りていますが、世代交代を見据えると待ったなしです。

——今はAIがプログラミングもしてくれる便利な時代ですが、そこへの懸念はありますか?

非常に強く感じています。AIを使えば、Excelのマクロも資料作成もあっという間です。でも、その結果「指示は出せるけれど、中身の原理は全く理解していない人」が増えてしまうのではないかと。ITやエンジニアの領域でも、AIに任せた方が早いからと、若手に仕事を任せて試行錯誤させる機会が減っていると聞きます。何でもすぐに答えが見つかる世代に対して、どうやって「自ら考える力」を養い、根本の原理を教えていくか。これからの教育において、私たちが直面している最も大きなテーマですね。

【編集後記】

「1回のチェックを信用しない」という厳しい品質への執念。一方で、「原理を理解し、自分の頭で考えることの大切さ」を説く教育者としての温かな眼差し。

自らの手でプログラムを組み、機械の隅々まで知り尽くすT部長だからこそ語れる言葉には、確かな説得力がありました。人間を過信せず、しかし人間の「考える力」の可能性を誰よりも信じている——当社の盤石な品質基盤は、こうした現場第一の熱い想いによって支えられています。